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沖縄自治研究会

沖縄自治研究会

060419 No1

2006年4月19日 第1号 問合先 琉球大学文系総合研究棟702号沖縄自治研究会 T&F098-895-8473 jichiken@hotmail.com

【目次】────────────────────────────
1.今後の地域における大学・研究者の役割と沖縄自治研究会の目的
2.沖縄自治研究会の今後の活動  
3.自治研究会の関連出版物一覧

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1.今後の地域における大学・研究者の役割と沖縄自治研究会の目的 
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◆崩壊する沖縄の社会と自治
 「小さな政府」と「構造改革」の名の下に、小泉政権下では、構造改革の公共部門の徹底縮小と市場原理導入を図る改革が続いています。2000年は、地方自治法の大改正が行われ、自治体の発案と自主立法が尊重される分権改革が進みましたが、同時に中央から地方への補助金の大削減が開始され、補助金に頼り切っていた財政的基盤の弱い自治体は、特に沖縄の自治体は破綻寸前といえます。

 改革の波はこれで終わりではありません。現在、自治体の破綻法制が検討され、同時に、自治体の一般財源である交付税交付金の5年で4割削減が提唱されています。これが実現すれば、沖縄の自治体の多くが破産していく可能性はきわめて高いといえます。このことは、単に自治体の財政だけの問題ではありません。地域社会を支えていた自治体が崩壊すれば、地域社会が崩壊します。地域社会が崩壊すれば我々の安心した暮らしはもはや望めません。沖縄の社会全体の問題といえます。

 ではどうすれば良いかということになりますが、改革の波を止められない以上、来るべき危機的状況に対する準備が必要になります。
具体的には、自治体自らが、そして地域社会自らが、地域社会の再生を、そして地域の力の再生を目指して、根本的に刷新していく必要があります。中央に依存しない、自律的・自立的な自治と地域社会のシステムを作り出していかなければならないのです。

◆ 主体的な市民と自治体職員・議員の育成
 では、こうした中央に依存しない自律的・自立的な自治と地域社会のシステムづくりが、行政の側から出てくるか、できるかというと、その可能性はきわめて低いといわざるを得ません。1つには、縮小していく予算と増殖する仕事の中で、そうしたことに気づき、考え、対処する余裕がないということがあります。また、これまでの自治のあり方の大転換を検討すること、あるいは大転換を要求する市民を育成することは、これまでの自己のあり方の自己否定に繋がり、極めて出てきにくいということもあるでしょう。さらには、取り組まなければ自治体も地域社会がつぶれていくと分かっていても、どのように改革すれば良いのか県内どこにも改革モデルはなく、成果が前もってつかめない大転換など取り組めないということもあります。

 自律的な地域社会、自律的な自治体を作り出すのは主体的な「市民」です。市民の力を徹底的に喚起し、市民主権を実体化しない限り、今後の地域運営は成り立ちません。行政の側ではなく、市民の側から大転換を求めていく動きが必要になります。

 その次のあるいは同時的課題として、自治体職員・議員の意識の改革と能力・技能の質的転換があります。これまでの行政手法を脱ぎ捨て、自分達の知恵と力で、市民と協力しながら地域を運営する意識と能力を持った人材の育成です。

 このことを実現するためには、地域の頭脳集団である大学の研究者のサポートが必要であり、現在の地方の社会と自治の危機的状況を的確に伝え、未知の領域である今後の地域運営を担える人材を市民サイドと自治体サイド両方において育成することは、地域の国立大学の重要な使命であるといえます。少なくとも琉球大学の卒業生には、たとえいかなる職業に付こうと沖縄の地域づくりの学習と作業を進める地域社会再生の開拓者として、地域や自治体のキーパーソンとなる能力を身につけてくれることを期待したいと思います。

◆自治研の目的・役割と参加の呼びかけ
 こうした認識を背景に、沖縄自治研究会は、市民と自治体職員・議員と研究者の協働の「学び」を担い、自律的・自立的な自治と地域社会のシステムの構築に貢献するという目的で作られました。

 自治研における研究会は、その趣旨から完全に平等な関係を重視し、ワークショップ方式を採用して行われました。研究者と自治体関係者、市民の水平的な連携による政策立案は、今後の地域づくりの先導的な事例となります。今後も「地域づくりの主体となりうる市民と自治体職員・議員の育成」を、より実践的に、より自治の現場を重視し、より積極的に関わっていくということが自治研究会の目的、基本方針として06年3月の会議にて確認されました。

 沖縄自治研究会の目的と役割は、沖縄という地域社会全体に関わるものです。したがって、今後の新たな展開にあたっては、これまでの参加者だけでなく、新たに多くの市民、自治体職員・議員、そして研究者の参加が必要不可欠です。

 諸先生方の力を沖縄の地域社会と自治の崩壊を食い止めることにお貸し頂き、沖縄の地域社会の再生、沖縄の地域づくりのために、多様な分野の多様な研究を生していただければ幸いです。

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2.沖縄自治研究会の今後の活動について
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◆研究会のセンター化について
 沖縄自治研究会は、地域社会と自治を支えるため研究者と市民の協働の「学び」を担うという大学の役割に貢献する目的で作られました。沖縄自治研究会の活動は、琉球大学の本来の使命の一環と考えられます。地域社会のフィールド、自治の現場を中心としてより実践的な取り組みを可能とするためには、任意研究組織である自治研究会を大学付属のセンターとして組織再編し、自治体が必要とする行政計画や総合計画、調査研究、研修等を直接的な契約主体として引き受けられるようにする必要があると考えられます。その可能性を検討し、原案を立案し、社会貢献担当理事及び企画担当理事と面会し打診したところ、役割は認めるものの、大学付属センターにするという点で肯定的な意見をいただけませんでした。

 自治体の計画及び研修等の引受先としては、1,大学付属機関(センター化)、2,法人格を有する他の組織、の可能性があります。企画担当理事からは、沖縄TLOのように、琉大を基盤としつつも、全沖縄的な組織にしたらどうかという助言がありました。
新しい組織のモデルとして助言された沖縄TLO自体の可能性を検討したところ、4月より発足する沖縄TLOの主要業務には、特許移転業務と並び、地域とのリエゾン機能(連携)があり、その中で研修業務の受託主体となり、それを自治研究会との協力に基づいて研修を実施するという形態がとれることが判明しました。

 そこで、将来的な組織のあり方は順次相談し検討していくこととして、とりあえず、TLOを通したこの形態で研修を受託するものとし、自治研究会参加の教員を中心に講師陣を配置して実施するとの案で進めることになりました。ただし、確定的なものではなく、今後引き続き、自治体からの受託等、契約が絡む問題についての組織的対応を検討していきます。

◆研究会組織の本質確認
 以上の経緯を踏まえつつ、3月21日の会議においては、自治研究会の本質的な部分の確認が行われました。
身分・職業・所属政党等にまったくとらわれない個人単位での自由参加、自由な離脱、実名入りの責任ある発言、参加者全員の平等で対等な関係、ネット型の組織という特徴を本質として継続していくことが確認されました。この本質を生かしつつ、自治体の計画や研修の受注を含むより実践的な取り組みを可能とするという課題が引き続き検討されなければなりません。

◆定例研究会について
 月一回程度の定例研究会を行います。土曜日の午前9時半もしくは10時~12時半もしくは13時ぐらいまでです。4月は第4土曜の22日午前10時に確定。5月以降は、未定です。第何週にするか、固定化の方向で検討します。

 定例研究会に加え、年に数回、現在の自治・分権改革並びに市民自治の実体化に関連するキーパーソンを数名程度、県外から招聘し、講演会シンポジウム等を主催します。現在、自治体破綻法制の設計及び北海道道州制のキーパーソンである宮脇淳北海道大学教授、自治体経営改革の実践者である中田横浜市長等が検討されています。

 活動は「地域づくりの主体となりうる市民と自治体職員・議員の育成」と「市民自治を実体化する自治体づくり」を柱とします。
県内各自治体の公民館講座(社会教育・生涯学習事業)における地域づくり講座や政治・選挙啓発学級等をターゲットに市民性教育(Citizenship Education)の企画立案及び普及を、研究会の新たなテーマとして再出発を議論しているところです。
4月22日土曜日10時の企画会議において本年度の方針が最終的に決まる予定です。

◆職員研修の受託
 沖縄TLOを窓口として、中部広域市町村圏事務組合の「政策形成上級研修」の受託を目指しています。政策形成の理論を、長期政策提案研修を通じて職員の今後の業務における政策立案力の向上を目的とします。

 研修指導法は、講師陣の所属する沖縄自治研究会により開発され考案された方法論に基づきます。原則として研修ごとに下記の指導講師たちが各グループの議論の推移を見守り、適宜助言を行います。また、各グループには課題に沿った形で担当講師がつき、研修外も含め電子メールなどによって助言を行います。

 具体的には、1.当研修の目的に沿って議論の進行管理、2.適切な専門的助言(ただし特定分野に関する専門的助言は限度があり)、3.事後評価の視点から見た政策マネジメント指標設定の助言、4.政策体系の整合性チェック・総合調整に関する助言などを実施します。
今回指導を頂く沖縄自治研究会の講師は以下の通りです。
○仲地博(行政法 琉球大学法文学部長)
○佐藤学(アメリカ政治、政治学 沖縄国際大学法学部教授)
○島袋純(比較行政、地方自治 琉球大学教育学部助教授)
○西出順郎(政策評価 琉球大学評価センター助教授、前福井県庁評価担当職員)
○宗前清貞(都市政治、地方自治 琉球大学助教授 前ふくしま自治研修センター講師)
ほか(琉球大学・沖縄国際大学等教授陣)。研修生20名程度で、研修期間7月~12月の6ヶ月を予定しています。

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3.自治研究会の関連出版物一覧
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 自治研究会の定例会(ワークショップ)は、これまで半期毎に企画立案して、隔週の土曜日とし、4年で90回程度開催してきました。これまでの4年間の定例研究会及びシンポジウム等の完全議事録を残しています(約300時間分の議事録が収められています)。また後援、共催等として関わったシンポジウム等報告書、論文集もあります。すべての研究会議時事録は、HPに掲載していますので、そちらのダウンロードも可能です。自治研究会のURLは、http://plaza.rakuten.co.jp/jichiken/ です。ぜひご参照下さい。

■2005年度関連出版物
13.『ガバナンス変容の中の沖縄―グローバリゼーションと自治の新しい関係に関する研究―』(ガバナンス変容の中の沖縄研究プロジェクト、科研費報告書、2006年3月)
12.『小さな市民の大きな力私たちのまちづくり-中学校社会科市民性教育副読本-』
(沖縄県選挙管理委員会、明るい選挙推進協議会、2006年3月)

11.『沖縄自治州あなたはどう考える?―沖縄自治州基本法試案-』
(沖縄自治研究会、2005年10月)

■2004年度関連出版物
10.Okinawa Workshop & Symposium on Comparative Regional Governance
(University of the Ryukyus, March2005)
9.『ガバナンス変容の中の沖縄―グローバリゼーションと自治の新しい関係に関する研究―2004年度研究報告書』
(ガバナンス変容の中の沖縄研究プロジェクト、科研費報告書、2005年3月)

8.『沖縄の自治の新たな構想-研究論文・研究録・構想案-』
(自治基本条例研究プロジェクト、科研費報告書、2005年3月)
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/123456789/13387
7.『沖縄の自治の新たな可能性-定例研究会議事録-』
(自治基本条例研究プロジェクト、科研費報告書、2004年10月)
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/123456789/13209

■2003年度関連出版物
6.『沖縄の自治の新たな可能性-自治研究講座-』
(自治基本条例研究プロジェクト、科研費報告書、2004年3月)
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/123456789/13207
5.『自治基本条例市町村モデル条例と解説』(沖縄自治研究会、2003年10月)
4.『新しい自治体とこれからのまちづくり3―自治基本条例モデル条例―』
(自治基本条例研究プロジェクト、科研費報告書、2003年10月)
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/123456789/13168

■2002年度関連出版物
3.『新しい自治体とこれからのまちづくり2―自治基本条例モデル素案 シンポジウム&ワークショップ成果報告―』
(自治基本条例研究プロジェクト、科研費報告書、2003年3月)
http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/handle/123456789/13107
2. 『新しい自治体とこれからのまちづくり1』
(自治基本条例研究プロジェクト、科研費報告書、2002年10月)
1. 『沖縄自治研究会発足記念シンポジウム~新しい自治体とこれからのまちづくり:住民による、住民のための、住民の自治~』(沖縄自治研究会、2002年5月)

 1は、野村学術振興基金による研究助成金により出版、5及び10は、研究会による自費出版です。12は、沖縄県選挙管理委員会及び明るい選挙推進協議会の発行ですが、自治研究会で開発された研究・学習及び立案プロセスを一つのモデルとしており、自治研究会の協力による出版となっています。その他は科学研究費助成研究による報告書です。報告書の中には、15名の執筆者からなる合計22本の学術論文(うち英文5本)も含まれています。



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